オフィス移転のコストと主要項目:ざっくりとした予算の概要を解説


オフィス移転するときに必要な費用ってどんなものがあるんですか?



基本的には 「賃貸借契約の初期費用」「入居ビルの内装工事費」「現ビルの原状回復費」などがかかってきます。



なるほど…それぞれいくらで予算を組めばいいんでしょうか?



では今回は移転にかかる費用の概算をまとめてみましょう。あくまでも目安としてお考えいただければと思います。
オフィス移転は、企業の成長や変化を象徴する大きなステップです。しかし、その背後には多くの計画、調整、そして費用が伴います。移転の費用は、予想以上に多岐にわたることがあり、適切な予算の設定は事前の計画において非常に重要です。
この記事では、オフィス移転にかかる主要な費用項目と、それらをざっくりとした予算で考えるポイントを解説します。移転を検討している企業や、すでに計画中の企業の参考として、ぜひ活用してください。
※工事費用は仕様により変動しますのであくまで目安としてお考えください。
賃貸借契約にかかる初期費用
まず、 賃貸借契約を締結する際の初期費用についてです。
10坪から50坪くらいまでは個人オーナーが所有する物件が多く、敷金や礼金、保証委託料がかかるケースがほとんどです。また、50坪を超えると大手デベロッパー物件やファンド物件になりますので、敷金、保証金と仲介手数料のみとなります。
ただ、最近はファンド物件でも保証会社を利用できるケースが増えてきています。保証委託料を支払い、敷金保証金を減額する交渉(12ヶ月⇒0ヶ月~6ヶ月程度)が可能になるためです。
預託金(敷金・保証金)
貸主に一定の金額を無利息で預け入れる金銭を預託金(敷金・保証金)といいます。預託金は、基本的に退去時に返還されます。ただし、償却の設定がある場合は、償却分を差し引いて返還されます。
物件によっては、保証会社を利用することで保証金が0ヶ月になることもありますので、仲介業者に相談してみてください。
大手デベロッパー物件 | 賃料の12ヶ月 |
ファンド物件 | 賃料の6~12ヶ月分 |
個人オーナー物件 | 賃料の3~12ヶ月分 |
敷金は月額賃料の○ヵ月分と設定されます。契約更新時などに賃料の増減があった場合、差額を追加で預け入れたり、または一部返金されたりします。保証金は[面積]×[○○○円]という考え方ですので、たとえ賃料が変動したとしても、保証金の増減は無いというのが一般的です。
礼金
預託金とは別で、貸主側に支払う料金のひとつとして礼金があります。こちらは預けるものではなく支払うものなので、退去時に返金はありません。
大手デベロッパー物件 | なし |
ファンド物件 | なし |
個人オーナー物件 | なし~賃料の2ヶ月分程度 |
前払家賃
オフィスを契約した月の家賃を事前に払います。
これは1ヶ月分を丸々負担しなければならない場合もあれば、日割りが適用される場合もあり、異なります。
保証委託料
保証委託料はその名の通り、保証会社を利用する際にかかる費用になります。
相場は、月額固定費の1ヵ月分です。月額固定費なので、賃料・共益費・駐車場・看板使用料なども入った合計金額になります。
保証会社を利用することでオーナーのリスクが減るため、敷金保証金が少なくできるのが一般的です。


仲介手数料
物件の紹介・案内や賃貸条件の交渉、重要事項の説明から契約締結などに携わった不動産会社(仲介会社)に支払う金額が仲介手数料です。金額に関しては宅建業法で定められており、賃料の1ヶ月分が上限になっています。
火災保険料
一般の賃貸住宅だと火災保険の加入は任意ですが、賃貸オフィスの場合だとほとんどが火災保険の加入を義務付けています。
契約期間は2年間で、加入するプランは契約するオフィスによって異なります。相場は1〜2万円ほどで、金額の幅が広がっているので、保証内容も確認した上で契約しましょう。
火災保険料


入居工事にかかる費用
次に、入居するオフィスビルでかかる費用についてです。
ほんとにざっくりとした金額は、以下の金額が目安になります。
移転先面積(坪) × 100,000円以上
移転先面積(坪) × 200,000円以上
移転先面積(坪) × 300,000円以上
※什器(デスク、チェア、キャビネット)などを購入する場合は、上記費用に加算されます。



それではここで、もう少し詳しく工事の内容や内訳をみていきましょう!金額は目安です。
A工事:オーナーの費用負担で行う工事
B工事:テナントの費用負担だが工事業者はオーナーが指定する業者(ゼネコンがほとんど)
C工事:テナントが選定した業者に依頼できる工事(費用負担はテナント)
電気工事
OAタップなどの電源工事です。小規模のオフィスでも必要な工事となります。
必要な電気容量を計算し、分電盤から回路を分けて配線します。ただし、複合機や冷蔵庫などの電気容量が大きい電化製品は単独で回路を設ける必要があります。また、壁に備え付けてあるコンセントは、断線の恐れがあるので、PCなどでは使用しないようにしましょう。
工事費用の相場 | 30,000円~40,000円/坪 |
電気容量が足りない場合は増設が必要になります。その場合の工事はB工事になります。
LAN、ネットワーク工事
オフィスに必須なネットワーク環境の工事です。こちらは設置箇所数で計算します。
工事費用の相場 | 15,000円~20,000円/箇所 |
電話工事
現オフィスと移転後のオフィスで管轄する基地局が変わる場合は、電話番号を変更する場合が多いです。NTTの基地局を調べたい方はこちらをご確認ください。
新規購入の場合 | 40,000円/台 |
移設の場合 | 20,000円/台 |
内装工事(壁紙やカーペットの張り替え)
理想のオフィスに近づけるのに必要なのが内装工事です。壁紙もカーペットも材質などによって料金が異なってくるので実際に工事をされる際にはしっかりと確認するようにしてください。
オフィスの床面は、カーペットタイル、オフィスタイル(Pタイル)のどちらかになるのが一般的で、基本的には㎡単価になります。タイルカーペットは、毛足が長い分金額が上がります。引渡し状態のタイルカーペットは1,000円/㎡程度の仕様のものが多いです。
最近は塩ビ製のフローリング調のシートが人気です。石のようなデザインタイルもかっこよくておすすめです。
壁は、ビニールクロスの仕上げにするのが一般的で、こちらも多くが㎡単価になります。
タイルカーペット工事費用の相場 | 3,000円~/㎡ |
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ビニールクロス工事費用の相場 | 1,500円~/㎡ |
内装工事(エントランスの造作)
こちらも材質などによって料金は大きく異なりますが、 エントランスは企業の顔となる部分ですのでしっかりお金をかけてデザインされる企業が多い印象です。
LGS(Light Gauge Steel(ライト・ゲージ・スティール))と呼ばれるボードで造作するケースが多いです。
エントランス工事費用の相場 | 100,000円~300,000円/坪 |
パーティション工事(会議室や役員室)
パーティションは、LGS・アルミ・スチール・ガラス製などの種類があります。
天井の裏側まで工事をするか、素材はなににするかによって料金はもちろん、防音効果も変わってきますので、セキュリティの面でもしっかり工事する必要があります。
パーティション工事費用の相場 | 150,000円前後/坪 |
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パーティション工事は、工事区分により、B工事かC工事か際どいところになってきます。ここの交渉ができるか否かで工事費用が大きく変わってきます。


セキュリティ工事(執務室のドアなど)
貸室内に設置するセキュリティです。暗証番号式から指紋認証などさまざまな機器があります。
セキュリティ性が高くなるにつれて、値段も相応に高くなります。
テンキー認証・ICカード認証の相場 | 数万円~200,000円程度 |
指紋・静脈認証の相場 | 数万円~700,000円程度 |
空調工事
吹き出し口の増設や移設を行う工事です。レイアウトによっては、間仕切りと空調が被ってしまうため吹き出し口を移設したり、サーバー室を設ける際には冷房専用の空調を設置したりする必要がある場合があります。
空調を増設する際に、室外機も一緒に増設しないといけない場合などもありますので料金は幅広く変わります。その時の状況に応じて内装会社に見積もりを依頼しましょう。
通常、空調工事はB工事になります。
防災工事
非常用設備やスプリンクラーの増設工事です。地上10階以上の区画になるとスプリンクラーが設置されています。会議室などの個室を作る際にはスプリンクラーの増設が必要になります。また、個室毎に非常灯やスピーカーの設置が必要です。
火災報知器の相場 | 30,000円~程度/台 |
誘導等・火災報知器・消火器などを一から用意する場合の相場 | 500,000円程度 |
通常、防災工事はB工事になります。
引っ越し作業
人数で計算します。作業する日数や時間帯によって変動します。
引っ越し費用の相場 | 10,000円~15,000円程度/人 |
大事なのは、入居工事に関する工事区分表です。工事項目によってはオーナーの指定業者に依頼しなければならないケースがあります。指定業者は割高なケースがありますので、事前に確認しておきましょう。
但し、電気の一次側工事や、空調工事、防災工事はオーナー側の業者に任せた方が賢明です。停電等のトラブルになると、ビル全体に影響が及んでしまうことがあるためです。このあたりは仲介業者に必ず相談した方が良いポイントになります。


現オフィスに関する費用
現在入居しているオフィスに関しても退去前にかかる費用があります。
原状回復工事費用
元々使っていた(移転元)オフィスの工事です。入居した当時の仕様に回復するために必要な工事になります。契約書の内容にもよりますが、工事業者はオーナー指定のケースがほとんどです。
入居工事のB工事と同じく割高なケースがありますが、相見積もりを取るなどして交渉の余地はあると思いますので、こちらも仲介業者に相談してみると良いでしょう。
個人オーナーの場合 | 30,000円~50,000円/坪 |
大手デベロッパーの場合 | 50,000円~100,000円/坪 |
- 小・中規模オフィス原状回復工事(目安) ⇒ 1坪あたり2~5万円
※50坪のオフィスの場合、100万円から250万円 - 大規模オフィス原状回復工事(目安) ⇒ 1坪あたり5~10万円
※200坪のオフィスの場合、1000万円から2000万円
※物件によってかなり差がありますので、見積をとって早めに確認することをおすすめします。
また、原状回復工事は、ビルオーナー・管理会社が指定した業者に依頼しなければならない場合が多く、指定業者経由で様々な業務を発注することでマージンが発生するため通常の業者よりも費用が高くなる傾向があります。
明け渡しまでの家賃や水道光熱費など
上記の原状回復工事費用の他にも、退去日までの家賃や水道光熱費も発生します。
賃貸オフィスで契約期間内に解除した場合は解約金が別途生じることもありますので、事前に確認しておきましょう。
引越しに関する費用
引越し費用は、2~3万円/人が相場と言われています。ただし、エレベーターの有無や階段・通路の幅、クレーン作業が必要か否かなどの要素にも左右されます。(大型物件の場合は貨物用エレベーターなどがあるので、搬入出の際は非常に便利です。)
※デスク、チェア、収納棚、ホワイトボードなど、什器を廃棄する際には処理費用がかかります。マニフェスト(産業廃棄物管理票)を発行してくれる業者に依頼することをおすすめいたします。
廃棄物の処理費用は、4トン車1台分で、およそ10万円程度。機密書類やハードディスクなど特殊な廃棄処理は業者毎に対応が異なりますので、確認が必要です。
廃棄物に関する費用
書類棚、デスク、チェア、什器など、不要になったオフィス家具などを廃棄する際にかかる費用は2tトラック1台あたり8〜10万円です。
正直、最近だと廃棄するだけでも結構な費用がかかってしまうので、廃棄よりも「買取」の選択肢を増やしておくと負担が減ります。
買取をしてもらう場合は、まとめて見積もりをお願いすると高く買い取ってもらえる場合もありますし、電化製品だと新品を購入すると同時に廃棄する電化製品を無償で引き取ってくれることもあるのでおすすめです。


まとめ
今回説明した以外でも細かいところでは、移転案内状や名刺、封筒などの印刷物などにも費用がかかります。
上記の通り、オーナーの属性によって費用に差が出てきます。また、入居工事については移転目的や企業イメージなどによっても変動してきます。
最近は、賃料を抑えて内装費用にコストをかける企業様も増えてきており、必要最低限を揃えるだけでなく、それぞれが理想のオフィスをつくるようになっています。
移転の流れやスケジュール感を確認したい場合は下記より「移転マニュアル」などの資料を無料ダウンロードしていただけます。また、直接ご相談したい方は情報収集段階でももちろん構いませんので、弊社までお気軽にご連絡ください。